大丈夫か?!グローバル人財育成

日本経済新聞9月3日朝刊に次のような記事があった。
高校生やその保護者が米国などの有力大学への進学に関心を寄せている。米国のハーバード大やイェール大の学生らが8月、日本で高校生向けに開催したイベントには応募が殺到。留学情報会社などへの問い合わせも増加傾向だ。関係者は「外国語の習得だけにとどまらず、国際的に活躍する実力を磨きたいという動機が目立つ」と分析している。

何と?!5人

この記事を読み始めてすぐ、違和感を覚えた。何故なら5、6年ほど前からマスコミが、若者の「内向き志向」などの心理的要因により、留学生数が激減しているとの報道に接してきたからだ。
2010年3月に来日したハーバード大学学長ドリュー・ギルピン・ファウスト氏は、訪日時の感想を「日本の学生や教師は海外で冒険するより、快適な国内にいることを好む傾向があるように感じた」と語っていた。
そのことを更に印象付けるような記事が、米ワシントン・ポスト紙に2010年4月掲載された。内容は、2000年以来、日本人学生数が減り続け、学部生の数が52%減少、大学院生の数が27%減少した。減少の理由を学生の安定志向が高まり、冒険心が薄れたためとし、日本は「草食動物(grass-eater)の国」に衰退したと。

そこで実態を調べてみると、図1にあるように、日本人留学生は2004年をピークに5年間で約30%も減少している。
ハーバード大学への留学生数をみると、1993年に174人だったものが2009年には107人と約40%減少している。但しこの人数には大学院生を含んでいる。
そして驚くことに日本人留学生数は学部生に限れば、2009年には5人しか在籍していない。この人数は入学者数ではない。

減少の原因

ウェブマガジン「留学交流」2011年5月号に掲載された明治大学国際日本学部特任教授 小林明「日本学生の海外留学阻害要因と今後の対策」に、減少についての様々な考察がなされている。
社会的要因として、経済の停滞と家計の悪化、就職活動と交換留学等の時期の重複などがあげられている。
「内向き志向」(日本の居心地が良くて、海外生活に興味を持たない)などの心理的要因についての指摘は様々あるが、科学的に実証されているわけではない。

図1:日本人の海外留学状況

図1:日本人の海外留学状況

英語圏への留学生減少理由としては、2006年7月に「TOEFL」の試験方法が変わり、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能統合型になったことが大きいと指摘される。日本人受験生が得意としてきた「文法」等がなくなり、精神的ハードルが高まっているようだ。

図2:アメリカの公立・私立4年制大学、2年制大学の授業料の推移(1997-2007)

図2:アメリカの公立・私立4年制大学、2年制大学の授業料の推移(1997-2007)

また、米国への留学生減少の理由として、「9.11」以降の安全性の問題、相対的な国力の低下、学費の高騰(図2)、競争率の上昇などが考えられる。 競争率の上昇は、図3にあるように日本以外の国から、特に中国、韓国、インドからの留学生数の上昇によるものだということが分かる。米国大学では定員の約10%を留学生枠としており、受験者数の増加から難易度が上昇していることがうかがえる。また、この図から米国への留学生数減少が、日本特有の原因にあることが推測できる。日本経済新聞の記事にあるように、米国大学が受験ガイダンスを日本で開催するなどは、ダイバシティへの危機感の現れである。それほど減少率が大きく、特異な現象といえる。
米国留学生減少数と全留学生減少数がほぼ同等ということ(図4)から、留学生減少数の主要因がそこにあることが分かる。

図3:国別米国留学者数トップ10の推移(2005-09)

図3:国別米国留学者数トップ10の推移(2005-09)

経済、社会等様々な分野での国際化の必要性が叫ばれるようになってから久しい。また、留学だけが国際化の対策ではないことも事実だが、高等学校や大学といった高等教育機関を始め、留学生増加対策の必要性を痛感する。
各教育機関は留学期間、目的、年齢等に柔軟に対応したプログラムを用意することが可能である。また、海外の学校や企業とのアライアンスに取り組むこと等により、多様化したニーズに柔軟に対応することができると思われる。是非積極的に国際化に向け、グローバル人材育成を担って欲しい。

図4:日本人の海外留学者数と米国留学者数の推移(2004-2008)

図4:日本人の海外留学者数と米国留学者数の推移(2004-2008)

 

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