梶本修身著「すべての疲労は脳が原因2」

 職場からの帰宅時の電車内は読書タイムなのですが、眠くて続けられない程疲労感が強く、ホーム・ドクターにも相談するような状況でした。そのような中、この本を目にしましたので、読んでみることにしました。

 

 疲労は身体の疲れではなく、脳だそうです。自律神経の消耗と疲弊だそうです。目から鱗が落ちる思いです。皆さんご存知でしたか?

 眼精疲労も同じ自律神経の消耗ということも驚きです。

 

 疲労とは何か、どのようなメカニズムで発生するのか、抑制するにはどうしたら良いのか、対処方法、予防方法が非常に分かり易く、具体的に記されています。

 

 読書後取り入れたことが二つあります。

 一つは鶏胸肉を食べるようにしたことです。疲労回復にはイミダペプチドが良いとあります。スーパーやドラッグストアにもドリンク剤が並んでいますが、毎日摂取するには少々高いように感じました。そこでイミダペプチドを多く含む鶏胸肉を食べる頻度を高くしました。二ヶ月位毎日食べました。

 二つ目は、「ステート(状況)」という概念を導入しました。自分の体の状況に関係なく、1万歩歩くと決めたら毎日歩く。暑い日も雨の日も歩くような性格です。それを止めました。その時の体調、環境などに合わせ柔軟に考え、対応するようにしました。決めたのだから必ず行うでは、体だけでなく、脳も疲労するようです。

 この二つを取り入れたこと、歩く歩数を20%減少したことにより、数か月後には疲労(感)は大分解消しました。

 

 

 

「本書の初めに、明確にしておきたいのは、『疲れているのは、体よりも脳である』とい

 うことです。

  疲労とは、日本疲労学会によって次のように定義されています。

『一般に運動や労力などの身体作業(運動)負荷あるいはデスクワークなどの精神作業負 荷を連続して与えられたときにみられる、身体的あるいは精神的パフォーマンス(作業効 率)の低下現象』

 具体的には、行動量や思考力、刺激に対する反応が低下する、注意力が衰えて散漫になる、動作が緩慢になる、気分がめいる、視野が狭くなる、体のどこかが痛くなるといった変化です。

 これらの症状には、誰しも思いあたるところがあるでしょう。しかし、疲労というと、体で起こっている現象のようにイメージしていませんか。たとえば、運動を過剰にすると筋肉痛が起こるため、筋肉そのものがダメージを受け、体が疲れたのだと思いがちです。しかしながら、私たちの研究では、そのような身体的に疲れたと感じるダメージの根本は、実は脳で起こっているということがわかっています。

 まず、ヒトの体が、疲労を起こすメカニズムを考えてみましょう。

 結論から言うと、『自律神経を酷使しているから疲れる』のです。自律神経という言葉はよく耳にされると思いますが、呼吸、消化吸収、血液循環、心拍数、体温、発汗、瞳孔の開閉などや、内臓と器官、血管、分泌腺といった、生きるためのベースとなる機能を整えている神経システムのことです。『交感神経』と『副交感神経』の二種類からなります。これらの神経のおのおのの働きを理解しておくと、体の仕組みがよくみえてきます。

 交感神経とは、おもに起床時から日中の心身が活動的なとき、運動時や仕事中、緊張や興奮、集中時、また、怒っているとき、危険や恐怖を感じたとき、ストレスがあるときなどに働きます。『闘争神経』と呼ばれることもあり、自然界で獲物を捕食するときや敵から身を守る状態に呼応する神経と言えるわけです。」

 

「疲労は、実は、この自律神経の消耗と疲弊によって生じるのです。

 たとえば、ゴルフやジョギングを終えると、『体が疲れた』と感じます。しかし、30度を超える蒸し暑い日に運動するのと、涼しい快適な環境で同じ運動をするのとでは、運動後の疲れに大きな差が生じることは誰しもが経験的に知っていることでしょう。つまり、同じ運動量で同じように体を使っても、環境や条件によって体温や心拍の調整などをつかさどる自律神経への負担に差があって、疲れ方が大きく違うのです。このことは、運動時にみられる疲労が、体ではなく自律神経の疲労を反映していることを裏づけています。

 運動に限らず、デスクワーク、緊張するコミユニケーションの場においても、交感神経が優位になります。交感神経が優位な状態で休息や睡眠をとらずに、無理に活動を続けると、やがて自律神経の中枢、つまり、コントロールセンターが疲労を起こします。

 では、その自律神経のコントロールセンターとは一体どこなのでしょうか。それは、脳の中にあります。

 脳は千数百億個を超える神経細胞(ニューロン)の塊です。大きくわけて『大脳』『小脳』『脳幹』という3つのブロックからなります。

 自律神経の中枢であるコントロールセンターとは、脳幹にある『視床下部』と『前帯状回』という部分です。我々が疲労を感じたとき、まさにここが疲れていると言えるのです。

 

 誰しも疲れてくると、頭痛やめまいがする、眠気に襲われる、ぼーっとする、血圧が変動して立ちくらみがする、耳鳴りがする、体温調節がうまくいかなくなって火照る、バランス感覚を失ってふらつくといった症状が出てきます。これら『自律神経失調』の症状こそ、自律神経とそのコントロールセンターが疲労でシステムダウンの寸前まで追い込まれているサインでもあります。このようなときは、すぐに活動を停止して、休息をとるべきなのです。」

 

「脳幹のほか、脳の80%ほどを占めている大脳にも疲労は溜まります。オフィスでは仕事でパソコンとにらめっこし、通勤電車での行き帰りではスマートフォンやタブレット端末でゲームにふけり、帰宅後もスマートフォンで夜遅くまで連絡をとり合う……。IT化が進むいま、大脳が処理するべき情報量は、ネットが広がる前の社会に比べて格段に増えています。

 先に述べた症状はすべて疲労のサインですが、中でも、『飽きる』『疲れる(効率が落ちる)』『眠くなる』は、脳疲労の3大サインと言えます。

 このうち、最初に出てくるのは、『飽きる』という症状です。同じことをずっと続けていると、情報を処理するために同じ神経細胞の回路が繰り返し使われるようになります。するとそこで疲労が起こるため、防御的に違う神経細胞を使わせようとして発せられるのが『飽きる』というサインなのです。

 疲労の本質は、パフォーマンスの低下です。『飽きる』というサインが出ているのに、無理をして同じことを続けると、頭がぼうっとして作業効率が落ち、疲れを自覚します。これが二つ目のサインです。『飽きる』というサインが出たら、休息をとる、別の作業を行うようにしてください。そうすることで、作業効率の低下を抑えることができます。

『飽きる』を放置し、作業効率が落ちているのにさらに続けていると、次に『眠くなる』という自覚症状が現れます。疲労の多くは自律神経とそのコントロールセンター(中枢である脳の視床下部と前帯状回)で起こりますが、それを『疲れた』という感覚、すなわち疲労感として認識するのは、大脳の前頭葉にある眼窩前頭野というところです。『眠くなる』というのは、『飽きる』よりダイレクトに休息を促す脳からのメッセージなのです。」

 

「本当は自律神経とそのコントロールセンターである脳が疲れているのに、体の疲れと間違えられるケースは少なくありません。ビジネスパーソンの多くが悩む『眼精疲労』もそのひとつです。

 デスクワークでパソコンやタブレット端末を使い続ける、オンでもオフでもスマートフォンから目が離せない生活を送っていると、当然、目は疲れてきます。

 眼精疲労の大きな要因は、自律神経とそのコントロールセンターの疲れ、つまりは脳疲労にあります。そのきっかけとなるのは、目のピント合わせ機能です。

 ヒトの目は、パソコンやスマートフォンの画面のような近くのものにも、また、夜空に浮かぶ月のように遠くのものにも、自在にピント合わせを行っています。それを可能にしているのが、目のレンズに相当する水晶体の両端についた毛様体筋という筋肉です。副交感神経が優位になると毛様体筋が縮み、レンズが厚くなって近くにピントが合います。そして交感神経が優位になると毛様体筋がゆるみ、レンズが薄くなって遠くにピントが合うのです。

 自律神経による目のピント合わせは、パソコンもスマートフォンもない原始時代に初期設定されたものです。原始時代の自然環境では、緊張時には交感神経が優位となり、レンズを薄くして遠くの対象にピントを合わせて、外敵や獲物を探していたのでしょう。そしてリラックスしているときには副交感神経が優位になり、狩猟や採集で得た食べものや抱いて育てている子どもなど近くの対象にピントを合わせていたのです。

 この初期設定は変わっていないのに、いまのビジネスパーソンが置かれている状況は、原始時代とは正反対です。仕事中は交感神経が優位であるため本来はレンズを薄くして遠くにピントを合わせるべきなのに、この数十年でパソコンやタブレット端末で仕事する機会が増え、近くに焦点を合わせなければならない矛盾した状況が生じているのです。つまり仕事中、脳は交感神経優位なのに目のレンズには副交感神経優位になる信号を送ることになるわけです。その結果、自律神経とそのコントロールセンターが混乱して疲れます。これが眼精疲労の正体なのです。眼精疲労にみられる頭痛やドライアイも実は自律神経の乱れによって起こるのです。

 仕事中に目の疲れを感じたらデスクワークを中断し、窓の外の景色を眺めるなどして交感神経と副交感神経のバランスをとってください。疲れを感じる前に、日ごろからそうした習慣を身につけておくことも重要です。」

 

 だから、時々郊外へ出かけ緑や景色を眺めると、リラックスし、疲労が回復したような気がする訳です。

 

「次に、よく言われる、『肉体的な疲労』と『精神的な疲労』の違いについて考えましょう。一般に、これらは別の病態だと認識されていることがあるようですが、それは正しくはありません。日常生活で生じる肉体的な疲労感も、自律神経とそのコントロールセンターの疲労であり、肉体そのものは疲れていないことが大半なのです。

 筋肉の損傷の度合いを測る指標には、CPK(クレアチンフォスフォキナーゼ)やLDH(乳酸脱水素酵素)があります。疲れを感じる運動をしたときの筋肉のCPKとLDHの値を調べてみると、実はほとんど変化がないことが実験で明らかになっています。

 たしかに、登山や格闘技などのハードな運動をするとこれらの値は上がり、筋肉にもダメージが加わっていると推察されますが、仕事中の営業活動や、汗ばむ程度の軽い運動ではこれらの値は上昇せず、筋肉の損傷も起きていません。

 つまり、日常生活で疲れたと感じたときに、もっとも疲れているのは、自律神経とそのコントロールセンターである脳だったのです。」

 

「脳でも内臓でも筋肉でも、疲れの直接の引き金になっているのは、活性酸素です。さまざまな健康分野において、活性酸素は老化や病気の原因となるという情報を耳にすることも多いでしょう。

 私たちはつねに呼吸をして酸素をとり入れています。この酸素のうちの1~2%は、体内で活性酸素に変化します。おもな活性酸素には、スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素、一重項酸素の4種類があります。

 活性酸素はほかの物質に対する反応性(活性)が高く、強力な『酸化作用』を持っています。酸化とは、ほかの物質の電子を奪うことですが、電子を横取りされたほうの物質は不安定になり、正しい機能が果たせなくなります。そして、自らを安定させるために、ほかの物質から電子を奪おうとするため、まわりの細胞や組織にドミノ倒しのようにダメージが広がります。

 ヒトの体は、こうした酸化ストレスに長期間にわたってさらされると、老化、がん、動脈硬化、シミ、シワ、白内障などの症状が現れます。疲労も、活性酸素による酸化ストレス、ダメージによって引き起こされるのです。

 細胞レベルで活性酸素の攻撃をどこよりも受けやすいのは、細胞内でエネルギーを作っているミトコンドリアという器官です。ミトコンドリアでは、酸素を介して脂質と糖質からエネルギーを作り出していますが、ここでは酸素の消費量が多いため、活性酸素の発生量も多く、酸化ストレスを受けやすくなります。

 ミトコンドリアが酸化ストレスを受けると、エネルギーが効率的に生み出せなくなり、細胞の機能が低下します。自転車のチェーンが錆びると車輪が動きにくくなって機能が低下するのと同じように、自律神経に負担がかかると、自律神経にある細胞のミトコンドリアで活性酸素が大量発生し、酸化されて機能が低下します。そして、自律神経の細胞が本来の働きをすることができなくなります。これが『疲労』なのです。

 つまり、私たちが経験する疲労のもっとも主たるメカニズムは、次のようになります。

 

 ① 自律神経の中枢(脳の視床下部と前帯状回)を酷使することで、自律神経の細胞内のミトコンドリアにおいて活性酸素が大量発生する。

② 自律神経の細胞(とくにミトコンドリア)が酸化して錆びる。

③ 自律神経の細胞が本来の働きができなくなり、組織全体のパフォーマンスが低下す  る。

④ 疲労が起こる。

 

 生きている限り、呼吸は止められないため、活性酸素は発生し続けます。その一部はウイルスなど外敵を攻撃するときなどに有効活用されていますが、増えすぎた活性酸素は危険です。そのときに活躍するのが、酸化をブロックする『抗酸化作用』を持つ酵素群です。これを『抗酸化酵素』と呼び、SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどがあります。

 抗酸化酵素が過剰な活性酸素をブロックしてくれるのが理想ですが、抗酸化酵素の量は年齢とともにダウンします。仕事や運動などで盛んに活動すると、酸素の消費量が増えてミトコンドリアなどで活性酸素もたくさん発生します。その結果、抗酸化酵素の能力を上回る活性酸素が生じると、酸化ストレスによって、先述のように、疲労が起こります。

 疲労を防ぐには、活性酸素が大量に発生するようなアクティブすぎる活動を控えるとともに、抗酸化作用を持つ成分を食事で体内にとり入れることが有効です。食事については、第二章で触れます。」

 

「細胞に疲労をもたらすのは活性酸素ですが、活性酸素そのものが疲労感を起こすわけではありません。

 疲労感をもたらすのは『疲労因子』と称されるタンパク質です。英語で疲労因子を『ファティーグ・ファクター(Fatigue Factor)』と言うので、その頭文字をとって『疲労因子FF』と呼んでいます。疲労因子FFの存在を世界で初めて明らかにしたのは、東京慈恵会医科大学ウイルス学講座の近藤一博教授です。

 細胞が活性酸素による酸化ストレスを受けて疲労が起こっているとしても、それだけでは自覚症状にはいたりません。

 活性酸素が増え続けるような活発な活動をそのまま続けていたら、疲労はどんどん蓄積する一方です。そんなときは、全身の司令塔である脳に、『細胞が酸化ストレスを受けて疲労しているよ!』という情報を伝えて、活発な活動をストップ、休息をとるアラームを発してもらう必要があります。このアラームに相当するのが、疲労感です。

 自律神経や筋肉などの細胞が活性酸素で酸化されると、細胞内から老廃物が排泄されます。その老廃物の増加がシグナルとなり、疲労因子FFが発生します。言い換えるなら、『疲労とは、疲労因子FFが体内に多く溜まっている状態』です。疲労因子FFが溜まってきたという情報は、サイトカインと呼ばれる物質を通じて脳の前頭葉の眼窩前頭野へ伝わって疲労感をもたらします。ここで初めて『疲れている』という感覚が生じ、活動を弱めて休息をとろうという行動につながります。

 一方で、我々の体には、疲労の回復を促す物質も備わっています。それが疲労回復因子というタンパク質です。英語の『ファティーグ・リカバー・ファクター(Fatigue RecoverFactor)』の頭文字からよく『FR』と呼ばれていますが、本書ではわかりやすく、『疲労回復因子FR』と呼びましょう。これも、近藤教授によって発見されたものです。 疲労回復因子FRは、体内で疲労囚子FFが増えるとそれに呼応するように増加します。疲労回復因子FRは疲労因子FFを中和して、酸化ストレスでダメージを受けた細胞の修復を促します。その点で、疲労回復因子FRは、活性酸素で傷ついた細胞の錆び取り剤にたとえることができます。その結果、疲労因子FFが減り、疲労が回復し、疲労感もなくなるのです。

 疲労回復因子FRのパワーには個人差が大きいこともわかっています。同じような活動をしたとしても、一晩眠るとケロッと回復しているタイプ、疲れが翌日まで残るタイプ、病気になるタイプもいます。その差の一因は、疲労回復因子FRの働きぶりにあると言えます。疲労回復因子FRの反応性が高い人は疲労を溜めにくく、疲れにくいのです。

 同じ人でも、年齢とともに疲れやすくなります。これには、体力や筋力の衰え以外に、疲労回復因子FRの分泌量と反応性の低下が大きく関わっています。

 また、日ごろは運動などの活発な活動をしていない人が、突然ランニングや水泳など激しい運動に励み始めると、スムーズに疲労回復できないことがあります。

 それは、疲労回復因子FRは疲労因子FFが増えて初めて発生しますが、疲労因子FFが増える活動から遠ざかっていると、使わない筋肉が衰えるように、疲労回復因子FRの反応性も下がるからです。

 疲労回復因子FRによるダメージ回復には、睡眠の影響が大きいことがわかっています。時間、質ともに充実した眠りが疲労を回復させます。どのように眠ればいいのかについては、第三章で詳しく説明します。」

 

「疲労を溜めやすい食習慣

口空腹を我慢してダイエットをする

口早食い、ドカ食い、夜遅い食事が多くて太っている

口朝食を抜くことが多い

口会議中は飲み食いをしない

口食事は一人ですることが多い

口ファストフード店やカフェで、さっと食事をすます

口人から早食いだと指摘される

口タンパク質は肉や魚より、豆腐や納豆などの植物性食品からとっている

口柑橘類、黒酢、梅干しなどの酸っぱいものをあまり食べない

口イワシ、サバなどの青魚をあまり食べない

口濃い色の尿が出ることが多い

口夜中にトイレに起きるのが嫌で、就寝前には水分補給を控える

口汗をたくさんかいたら、ミネラルウォーターを飲んでいる

口日ごろのストレスは飲酒で発散し、二日酔いになることが多い

口イライラして眠れないときは温めた牛乳を飲む

口疲れてきたら、ニンニク料理で疲労回復を図る

 

疲労を軽くする食習慣

口おなかが空きすぎないように1日3食規則正しく食べる

口毎日、朝食は欠かさずに食べている

口長時間の会議では、甘いお茶菓子をつまむ

口食事は、家族、同僚、知人らといっしょにすることが多い

口たまには贅沢して懐石料理、コース料理を楽しむ

口ひと囗ごとによく噛んで食べるように意識している

口タンパク質は肉、魚、豆腐、納豆などからバランスよくとる

口柑橘類、黒酢、梅干しなどの酸っぱいものを好んで食べる

口イワシ、サバなどの青魚をよく食べる

口日ごろからこまめな水分補給を怠らない

口就寝前と起床後、コップー杯程度の水分をとる

口汗をたくさんかいたら、スポーツドリンクを飲む

口アルコールは、梅酒やレモンサワーを1杯程度

口イライラしているときは、白湯を飲む

口疲れたときには、鷄胸肉や豚ロース肉、カツオのメニューを選ぶ

口睡眠不足や疲れ解消にと、栄養ドリンクやエナジードリンクには頼らない」

 

「『抗疲労プロジェクト』では、疲労に効くと思われる23の成分について研究しました。実はその最後の23番目に加わったのが、イミダペプチドでした。渡り鳥の研究をしていたある食品メーカーから、『1万km以上も飛べる渡り鳥の体内には、何らかの疲労回復成分が含まれているのではないか。調べてみてはどうだろう』という提案があったのです。たしかに、キョクアジサシという渡り鳥は、1年の間に北極圏と南極圏を行き来しており、年間移動距離は3万kmに達すると言われています。何らかの疲労回復成分の助けがないと、これだけの距離を移動するのは難しいでしょう。

 前述のように、脳のほかに筋肉にもヒスチジンとβ-アラニンをイミダペプチドに再合成する酵素があるため、筋肉にもイミダペプチドは含まれています。そして渡り鳥の体でどこよりも疲れやすいのは羽根を動かす胸肉であり、胸肉にはほかの部位よりも多くのイミダペプチドが含まれています。

 日常的に手に入る食品で、イミダペプチドを豊富に含んでいる食材は、鶏胸肉です。飛ばないように品種改良されている鶏胸肉にも、遺伝的に多くのイミダペプチドが含まれています。

 生の鶏胸肉には、100gあたり平均して1223mgのイミダベプチドが含まれています。ただし、肉から摂取した場合、体内で消化吸収されるのは一部で、また、調理法、鶏の種類やエサによってかなりのばらつきがあります。ゆえに、1日100gの鶏胸肉を摂取していれば、少なくともイミダペプチド200mgは体内に吸収され、効果が期待できると言えます。

 スーパーなどで売られている鶏胸肉は1パックー枚、皮つきでだいたい250g前後ですが、皮などをとり除くと、可食部は200gほどになります。これで2日分の摂取分量になる計算です。」

 

「イミダペプチドやクエン酸より疲労軽減作用は落ちますが、組み合わせて使うならコエンザイムQ10(COQ10)も有効であることがわかっています。

 コエンザイムQ10はイワシやサバなどに含まれており、缶詰でも手軽にとれます。

 コエンザイムQ10には、『ユビキノン』という別名があります。ユビキノンとは、ラテン語の『普遍的に存在するもの』という言葉に由来します。その名のとおり、動物から植物まであらゆる細胞に含まれており、エネルギー代謝を助ける補酵素として慟いています。その疲労軽減作用を担うのは、エネルギー代謝アップと抗酸化作用です。

 ミトコンドリアでエネルギーを生み出すクエン酸回路では、コエンザイムQ10も働いており、エネルギー効率を高めて疲労からの速やかな回復を助けます。加えてコエンザイムQ10の抗酸化作用は、ミトコンドリアでの酸化ストレスの軽減を補助します。

 コエンザイムQ10は体内でも作られていますが、合成量は加齢とともに右肩下がりになります。また、ストレスや病気などでも合成量は減ります。

 イワシやサバなどの青魚には、コエンザイムQ10のほかにも、『EPA(エイコサペンタエン酸)』と『DHA(ドコサヘキサエン酸)』が含まれています。

 EPAとDHAはオメガ3脂肪酸という成分の一種で、ヒトの体内では作られないため、食品からとり入れるべき必須脂肪酸に分類されます。厳密には、同じオメガ3脂肪酸のaリノレン酸から体内で合成されますが、必要量を満たせないため、必須脂肪酸に準ずる扱いとなっています。

 EPAとDHAは、血中の中性脂肪値やコレステロール値を改善するほか、血液内で酸素を運んでいる赤血球の膜の成分となり、その柔軟性を高めます。

 細胞を養っているのは、毛細血管です。毛細血管の直径は1000分の6~7mmですが、赤血球の直径も同様です。赤血球の柔軟性が低いと、通り抜けられない毛細血管が出てきて、体の隅々まで酸素が届けられなくなり、クエン酸回路でエネルギーを生み出すプロセスが滞ります。サバやイワシなどからEPAとDHAをとると赤血球がしなやかになり、酸素が全身に行き渡るようになります。そうして、ミトコンドリアでエネルギーを円滑に生み出して疲労からの回復を促します。」

 

「ここでひとつ知っておいてほしいことは、これらの成分とイミダペプチドとの違いです。もっとも大きな差は体内での作用時間です。

 ポリフェノールは、摂取後30分くらいで血中濃度のピークを迎えますが、2時間経過時には、ピーク時の20%程度しか存在していないことがわかっています。それに対し、イミダペプチドは、消化管でアミノ酸に分解されたあと、体内の合成酵素で少しずつ再合成されるため、作用時間が長いのです。また、ポリフェノールは、全身で酸化ストレスと闘っていて、効果的に働く部位を選びません。そのため、いちばん疲れている脳に到達する前に、ほかの部位で活性酸素との闘いで消費され、脳に届くのはごく一部になります。

 その点、これまでに述べたように、イミダベプチドは、疲労の元とも言うべき自律神経のコントロールセンターである脳で集中的に抗酸化作用を発揮するので、抗疲労にもっとも有効であると言えます。そのことを知ったうえで、ここで紹介した疲労対策となる食品を好みに応じてうまく選び、効率的に摂取するようにしましょう。」

 

「疲れを溜める眠りの習慣

口あお向けでいびきをかいて眠る

口パートナーと同じベッドで寝ている

口夏の暑い夜、クーラーはタイマーをセットして寝る

口冬の寒い夜、寝室や廊下、トイレには暖房をつけていない

口寝る前に熱めの全身浴をするのが好き

口暗くなったら蛍光灯をつける

口夜遅くまでタブレット端末やスマートフォンをみている

口忙しいと睡眠時間は6時間を切ることがある

口肌の状態は気にしない

口朝は大音量の目覚まし時計で起きる

口カーテン、ブラインドで完全に遮光して寝る

口早寝早起きを心がけている

口日中、眠くなればいつでも1、2時間の昼寝をしている

口残業中、眠気覚ましにコーヒーを飲んだり、タバコを吸ったりする

口休みの前日は夜更かしをする

口休日は午後まで寝ている

口足先が冷たいときは靴下をはいて寝る

口睡眠時無呼吸症候群の自覚がないので気にしていない

 

 このような習慣や経験のある人は、少なからず、朝起きて寝床を出てからの第1歩が重たく感じるはずです。『通勤電車で座るとすぐうたた寝する』『起きてから4時間以内に眠くなる』『会議中の眠気を我慢するのに苦労する』といった自覚症状がある場合は、眠りに問題があり、疲れがとれていない可能性が高いと考えてください。そして、次にリストアップする眠りの習慣を身につけるようにしましょう。

 

疲れがとれる眠りの習慣

口横向きで、いびきをかかないことを意識して寝る

口パートナーとは、シングルベッド2台を並べるなどして別々に寝る

口夏の暑い夜はひと晩中クーラーをつけておく

口冬の寒いときは、ひと晩中、寝室や廊下、トイレに暖房をつけている

口寝る1~2時間前に、3840度のぬるま湯で10分程度の半身浴をする

口夕方以降はオレンジ色の光、または間接照明に切り替える

口夜間はパソコンやタブレット端末、スマートフォンの操作は極力避ける

口睡眠時間は最低6時間はキープしている

口肌のゴールデンタイムを知っている

口大きな音がする目覚まし時計はかけない

口寝室のカーテン、ブラインドを少し開けておく

口早起き早寝を心がけている

口ランチ後眠くなれば、15時までに30分ほど昼寝する

口夕方以降の暴飲暴食、コーヒー、喫煙は避けている

口休みの前日こそ早めに帰宅し、早寝を心がける

口足先が冷たいときは、通気性の高いレッグウォーマーで足首を温める

口睡眠時無呼吸症候群に気をつけている

 

 ここに掲げたチェック項目で当てはまるものが多いほど、睡眠で疲れがとれるようになります。以後、こうした習慣がどのように眠りに影響するのか、疲れがとれる眠りの習慣をとり入れるにはどうしたらいいかを、具体的に解説したいと思います。」

 

「疲労は、夏も冬も同じメカニズムで、気温の差によって体が受ける衝撃を緩和させようと自律神経が酷使されるために起こります。つまり、冬に暖房がないところでうたた寝をした、薄い布団で寝てしまったときには、自律神経は一気に疲労します。ただ、冬に温かい布団に入っている間は自律神経が酷使されることはないため、夏よりは深い眠りにつくことができるでしょう。

 ただし注意したいのは、夜中に目覚めてトイレに行く、早朝に目覚めて布団から出るときの冷気による刺激です。寝室や廊下、トイレに暖房が入っていなくて、真冬日と言われるような寒い日に布団から急に出ると、交感神経が一気に優位になり、血管がぎゅっと縮んで血圧が上昇します。

 寒い日の深夜にトイレに行って心筋梗塞や脳卒中になる可能性が高いことは周知のことですが、このとき、自律神経と脳は活発に働いています。たとえ重篤な病気にはいたらなかったとしても、脳では疲労が起こっているのです。寝室や廊下、トイレは日中と同じように、暖房を20度前後に設定してひと晩中つけておきましょう。

 起床時に寒いとなかなか寝床から出たくないと感じるのは、疲労を予防するためのサインです。そういったサインを無視せずに、できるだけ快適な室温を保つように工夫してください。」

 

「第一章で解説したように、酸化ストレスを受けると疲労因子FFが生じて、脳で疲労感を覚えます。次に、疲労因子FFに反応して疲労回復因子FRが増え、疲労因子FFを減らすと同時に、酸化ストレスで傷ついた細胞の修復を始めます。

 この反応は24時間休みなく行われています。日中活発に活動していると、活性酸素と疲労因子FFが出続けているため、疲労回復因子FRによるリカバリーが追いつきません。

 しかし、夜になると酸素をたくさん使う激しい活動や運動は少なくなり、疲労を起こす要因のひとつである紫外線もないため、疲労因子FFが減ってきます。これで疲労因子FFを疲労回復因子FRが上回るようになり、細胞の回復が進んで日中の疲労がとれるのです。

 睡眠には、体は眠っているのに脳が働いている『浅い眠りのレム睡眠』と、脳も体も休んでいる『深い眠りのノンレム睡眠』があります。ノンレム睡眠は深さに応じて4つのステージがあり、とくに脳の疲労を回復させるのはステージⅣの深いノンレム睡眠です。

 睡眠は、浅いノンレム睡眠から始まり、1時間ほどでステージⅣの深いノンレム睡眠にいたります。そこから少しずつ眠りが浅くなり、眠り始めて2時間ほどでレム睡眠に切り替わります。以降はノンレム睡眠とレム睡眠は交互に現れて、レム睡眠はおよそ90分間の周期で生じます。脳の疲労を回復させるにはステージⅣの眠りが3~4回必要なので、最低6時間の眠りを確保したいのです。」

 

「疲労を溜めやすい習慣と環境

口仕事中に『飽きた』と感じたら、集中力を高める努力をしている

口休息を挟まないで、粘り強く同じ作業を続ける

口デスクワークで連続して座っている時間が長い

口ドライブでは早く目的地に着きたいから、休憩は最小限に留める

口夏場はクールビズとして、室温は28度に設定する

口窓を閉めた空間で、長時間仕事をすることが多い

口屋外に出かけるのは好きではない

口休日には疲れをとるために遠くの温泉地まで足を延ばし、温泉三昧

口ハードな運動を、汗がダラダラ流れるまでやり切るのが爽快

口多少体調が悪くても、頑張ってトレーニングメニューは変えない

口帽子をかぶるときはサングラスをかけない

口紫外線カットのコンタクトレンズを装着しているから、サングラスはかけない

口晴天の日や夏以外、紫外線対策はとくに意識していない

口夏は肌を小麦色に焼いて、紫外線に負けない体を作っておく

 

疲労を軽くする習慣と環境

口仕事中に『飽きた』と感じたら、すぐに休憩を入れる

口同じ作業は、ちょくちょく休息を入れながら行う

口デスクワーク中は時々立ち上がり、歩き回る

口ドライブではときどき窓を開け、頻繁にトイレ休憩を入れる

口夏場、エアコンの室温はおよそ2526度に設定している

口部屋のドアや窓を少し開けて、風を通すようにしている

口木材や畳など、自然素材の温もりが感じられる空間が好きだ

口休日は近場の自然が豊かなところでアウトドアを楽しむ

口息が軽く弾むぐらいの軽い運動を、汗がにじむ程度まで20分ほど行う

口ウォーミングアップで心拍を計り、その日の調子に応じて運動メニューを調整

口帽子をかぶり、顔の形に合った紫外線透過率の低いサングラスを使う

口出かける前は紫外線量に応じて日傘、長袖、日焼け止め塗布剤を適切に活用する

口疲れたときは観葉植物の葉っぱの香りをかぐ

 

 思い当たることはいくつありましたか。

『疲労を溜めやすい習慣と環境』に当てはまる項目が多く、『疲労を軽くする習慣と環境』での項目が少ない場合は、日常の何気ない習慣と環境で疲労が蓄積していることも考えられます。この2つのパターンの習慣と環境の違いによって、疲労の蓄積と回復はどう変わるのか。すぐに実践していただくために、一つひとつひも解いてみましょう。」

 

「デスクワークに飽きてくると、忙しいときはとくに、『飽きている場合じゃない。集中力を高めて乗り切ろう』と気合いを入れようとしませんか。しかし、疲労医学の観点からすると、それは大きな間違いです。第一章で、『飽きた』とは脳が疲労を感じているサインだと述べましたが、ここでは、同じ作業に集中すると脳ではどんな変化が起こっているのかをみてみましょう。

 脳は『神経細胞』でできていますが、ひとつの神経細胞は1000個以上の神経細胞とつながって、ネットワークを作っています。デスクワーク中の疲労の多くは、自律神経だけではなく、知的な作業を担っている大脳の神経細胞のネットワークでも起こっています。同じ作業を続けると、同じ神経ネットワークを使い続けることになるので、そこに活性酸素による酸化ストレスが溜まり、疲労が起こるのです。『飽きた』というのは、『ここばかり使わずに、ほかのネットワークを使ってよ。もう疲れた』という大脳のメッセージです。

 それを無視すると、疲労がつのるばかりではなく、疲労からの回復に時間を要するようになります。その理由は、神経細胞の次のような性質によります。

 神経ネットワークは電気で信号をやりとりしています。隣の神経細胞に、ある一定以上の電気信号が伝わり、『閾値(限界値)』を超えると興奮が起こってスイッチがオン、つまり、活動状態になります。『閾値』とは、興奮を起こすのに必要な最小限の刺激の大きさのことです。同じ神経細胞ばかりを使うと、錆びて傷ついた細胞を守るために防御的に『閾値』を上げ、反応を鈍らせる性質があります。つまり隣の神経細胞のスイッチをオンにするのに、より多くの電気信号が必要になるのです。スイッチが鈍感になるとイメージしてください。これでは情報処理が円滑に進まなくなり、ほかのネットワークのパフォーマンスも低下します。こうして大脳全体が疲れ、またそれを補うために自律神経が異常な緊張状態となり、やがて、頭が重くなる、目がしょぼしょぼする、肩がこるなどの症状も現れます。

 もっと困ったことに、一度『閾値』が上がった神経細胞は、容易には元の敏感な状態には戻りません。電気的な刺激がしばらく届かないように放置する、つまり完全休養しないと復活しないのです。

 デスクワーク中、2時間ごとに30分休憩を入れて同じ作業を続けた場合と、20分ごとに5分の休憩を入れた場合を比較してみましょう。作業をする合計時間も休憩時間も同じですが、20分ごとに休憩を入れたほうが『閾値』の上がり具合が小さく、脳の情報処理能力の低下が抑えられるため、疲れ具合はかなり軽減されます。2時間連続して仕事を続けた場合は、『閾値』が上がり、30分間程度の休息をとっても作業効率の低下を抑えるほどの回復は期待できません。そのため、飽きたと思ったらすぐさま休む、また、あらかじめ、『飽きる』ということを前提に作業の計画を立て、『飽きた』と感じる前に小刻みに休息をはさんで別の作業に切り替えるようにします。それが疲労を避ける方法であると同時に、作業効率を上げるポイントになります。」

 

「都市部の高層ビルやマンションなどでは、光や風や音など外部からの刺激をできるだけ遮断した人工的な環境づくりが行われています。猛暑や真冬の時期に室内を適温に保つのは疲れにくい方法だと述べましたが、過ごしやすい季節であっても、温度などが固定された人工的な環境は、逆に我々の疲労回復を妨げます。ヒトは、適度な環境の変化による『ゆらぎ』を心地よいと感じるからです。この『ゆらぎ』が脳疲労を軽減することは、科学的にも証明されています。

『ゆらぎ』とは、一定の平均値から微妙にずれた、ある程度の『不規則な規則性』を持つ現象のことです。風や光、空もようの変化、川のせせらぎ、植物のありようといった自然環境は、つねに『ゆらぎ』に満ちています。

 自然の一部であるヒトの体にも、『ゆらぎ』があります。脳波、心拍数、呼吸、体温、血流、血圧などには、よくみるとすべてに『ゆらぎ』があります。これを『カオス』とも表現します。脳波のずれが示しているように、神経回路の働き方に『ゆらぎ』があり、同じことを入力しても伝わる信号や出てくる答えは変わります。絵画で、若い女性にも老婆にもみえる有名な『だまし絵』がありますが、あるときは若い女性にみえたのに、次の瞬間には老婆にみえるのは、脳が『ゆらぎ』を持っている証拠のひとつでもあります。

 疲労との関わりが深い自律神経もまた、『ゆらぎ』のリズムを持っています。自然環境と生体の『ゆらぎ』が共鳴すると、ヒトは快適さを感じてリラックスします。緊張や強い刺激で優位になっている交感神経よりも、生体を休息させる副交感神経が優位になるため、ストレスや疲労が軽減されるのです。

『ゆらぎ』を感じる代表的な環境として、『森林浴』が挙げられます。『森林浴』で癒されるのは、そよ風、川のせせらぎ、木漏れ日といった『ゆらぎ』があふれている環境であり、生体の『ゆらぎ』がこれにシンクロするからです。近くにそういう環境があって身を置くことができれば、疲労回復にはとても有効です。

 また、『ゆらぎ』のある環境は、動物にとってもリラックスできる環境なのです。なぜなら『ゆらぎ』のない環境、たとえば森にそよ風がなければ動物は敵のにおいの察知が遅れ、襲撃されるリスクが高まります。室内で飼っている犬にも、どんなに快適な環境であっても『ゆらぎ』の乏しい室内においては数時間おきに場所を移動する習性が残っています。自然界の『ゆらぎ』は、ヒトを含む動物が身を守るために重要な要素であり、『ゆらぎ』がない環境は、身の危険を感じるリラックスできない環境なのです。」

 

「有酸素運動でも筋トレでも、適切な運動負荷をみつける際に重要なキーワードとなるのが、『キャパシティ(許容範囲)』と『ステート(状況)』です。

『キャパシティ』とは個人の体力レベルを表します。陸上選手のウォーミングアップは一般の人の全力疾走に相当するでしょうし、ボディビルダーが使うバーベルは普通は持てません。このように体力レベルにより、適正な運動負荷は異なります。本来なら運動は我流で始めるのではなく、スポーツクラブのトレーナーなどに指導を仰いで、自らの『キャパシティ』に応じたプログラムを処方してもらうほうが有用でしょう。

 もし自分で『キャパシティ』に合う運動をみつけるなら、有酸素運動でも筋トレでも、『息は弾むが、切れない』というレベルを上限としましょう。運動負荷=負荷×継続時間です。汗がダラダラ流れるまで行うのではなく、汗がじんわりにじみ、たらりと流れてきたら、これ以上続けると疲れが溜まると判断して切り上げてください。もちろん、『飽きた』と思ったら、それは疲労のサインですからストップしましょう。

 健康な成人を想定すると、有酸素運動ならウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水泳などで、筋トレならダンベルやバーベルなどの重いウェイトに頼らず自らの体重だけで行うスクワット、腕立て伏せ、腹筋運動などが妥当でしょう。時間は、それぞれ1回あたり20分前後までとしましょう。

『もっと続けたい!』と思ったときは、運動の時間を増やすのではなく、頻度を増やしてください。週2回1セッション40分間(例一有酸素運動20分十筋トレ20分)を行うより、週4回1セッション20分(例一有酸素運動10分十筋トレ10分)を行うほうが、疲れは溜まりにくいのです。

 また、有酸素運動は、『20分以上継続しないと体脂肪は燃えない』と言われていましたが、それは現在では否定されています。運動負荷が同じなら、20分X1回でも10分×2回でも消費されるカロリーも体脂肪も同じです。」

 

「自らの『キャパシティ』に応じた運動負荷を定めたら、次は、日々の状況の変化を示す『ステート』に応じて柔軟に動きましょう。『キャパシティ』は大きく変動しませんが、『ステート』は日々変わるものだからです。

 運動をしている人には、『キャパシティ』に応じたルーティンをくずすのを嫌がる人が少なくありません。1km6分のペースで10kmを走ると決めたら、疲れていても、雨が降っても、何としてでもそのペースで走り通そうとすることがあるでしょう。走り終わると、『疲れていたのに、いつもと同じように頑張れた!』と達成感を覚え、疲労感は吹き飛ぶかもしれません。これこそが『隠れ疲労』の状態です。実際には、脳疲労が溜まっているので危険です。スポーツクラブのスタジオプログラムのように、『キャパシティ』も『ステート』も異なるメンバーが同じエクササイズを続けることも、人によっては疲労の蓄積につながります。集団でトレーニングをする場合は、そのことを認識しておきましょう。

 5時間しか眠れなくて疲れているときと、8時間眠れて疲れがとれているときでは、『ステート』は当然異なります。同じ『キャパシティ』でも、心身への負荷の加わり具合が変わるので、毎回、『ステート』に合わせた負荷×継続時間を心がけてください。

 運動前に『ステート』を判断する指標になるのは、1分間あたりの心拍数です。まず、ウォーミングアップとして5分ほど早歩きをして、心拍数の上がり具合をチェックしてください。心拍数はスマートフォンやウェアラブル端末などで計測できます。また、心拍数=.脈拍数ですから、手首の内側にもう一方の手のひとさし指から薬指までを軽く押し当てて脈を15秒間とり、4倍すれば1分間あたりの心拍数の近似値が求められます。

 心拍数が普段より上がっていれば、『ステート』はよくないと推測されるので、いつもより負荷、もしくは継続時間を抑えてください。心拍数の上がり具合が普段と同じときは『ステート』は正常なので、普段どおりでいいでしょう。心拍数の上昇がみられないときは、負荷か継続時間を少し上乗せすると、体力の向上に結びつくでしょう。

 疲れを溜める心配がなく、疲労回復効果が高い運動としてストレッチがあります。

 ストレッチには大きくわけて、反動をつけずに筋肉をゆっくりじわじわと伸ばす『静的ストレッチ』と、ラジオ体操のように反動をつけながらダイナミックに大きく筋肉を動かす『動的ストレッチ』の2種類があります。

 静的ストレッチも動的ストレッチも、筋肉と関節の動きをスムーズにして血流を促進するので、疲労因子FF発生の元となる老廃物の排出を助けます。加えてストレッチで血流がよくなると、緊張で優位になっていた交感神経から、副交感神経優位に切り替わりやすく、リラックスして疲れが軽くなります。静的ストレッチでは、息を吐きながら筋肉を伸ばし、気持ちいいと感じるポイントで呼吸を止めずに1520秒程度キープします。動的ストレッチは、動かしている部分が温まるように感じるまで1520回程度続けてください。」